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心が強い人が持つ『他人に反応しない』技術

ビジネスでは結果がシビアに求められます。上司の評価・会社の査定・周囲の評価…気になるものです。そんな合間に開くパソコンやスマホ。「ネットサーフィンで頭がボーっとする」「SNSを見た後に寂しさを感じる」。仕事でもプライベートでもストレスやモヤモヤが溜まる毎日。こうした現代人の悩みを解消する方法をブッダは教えてくれます。
認められたい願望
最初に「承認欲」一認められたい願望一について考えてみましょう。実はこれが、現代人のあらゆる悩みのタネだからです。承認欲が強いばかりに勝ち負け・優劣を気にする人や、「自分には認められるだけの能力がない。だから自分がキライだ」という人が大勢いるのです。しかしブッダは承認欲を香定しません。欲求を否定すればむしろ抑圧や不満を生むおそれがあるし、「認められたい」という願いがモチベーションになることもあるからです。では、どうすれば良いのでしょうか。
「ある」ものを「ない」と考えてはいけない

ブッダは承認欲を「否定せずに、まず理解する」という立場に立ちます。「理解する」とは、「ある」ものは「ある」と、冷静に客観的に認識すること。「自分の心に承認欲がある」と理解してみます。すると「認められたからといって、それが何?」と考えることも可能になります。この「まず理解する」という発想は、悩みを解決する上でかなり効果があります。その後「合理的に考えていく」ことが可能になるからです。すると「悩み」の正体も見えてきます。たとえば、

  • 認められたい→自分の価値を「つい周りと比較してしまう」(落ち着かない)
  • 認められたい→自分は優れていると思い込む(プライドが高く、人の話を聞けない)
  • 認められたい→協力できない。「完璧主義」になってしまう(自分も周りもしんどい)
  • 認められたい→評価されない不満があり、その怒りをライバルに向ける(嫉妬)︎

  • このように悩みの正体を理解することで「では、どう考えればいい?」という具体的な解決のステップに入っていけるのです。悩みの原因を「理解」し、そこから「抜ける」(ラクになる)ための方法を考えます。何と妬」を取り上げてみましょう。
    嫉妬の正体は「承認欲不満」という怒りを第三者に向けている状態です。

      承認欲の不満がある→その怒りを第三者に向けている

    こう理解すると嫉妬というのは「やつ当たり」と同じだとわかりますね。じつは、嫉妬に「相手は関係ない」のです。では「合理的に考えると、どうなるでしょうか?

      承認欲の不満がある→どうすれば認められるか?(方法を考える)

    つまり、認められるために自分は何ができるかという「方法」を考え、その方法を実行しようという方向になります。こうすると「嫉妬」は「自分のモノゴトに専念するための前向きなエネルギー」に転換するのです。

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    悩みを生む「ムダな反応」していませんか
    ブッダの考え方の特色は「肯定」も「香定」もしないこと。いい悪い、勝ち負け、優劣を作り出すのは「判断」だからです。判断によって優越感をもつこともあれば、コンプレックスに悩むこともあります。「判断こそが悩みを生んでいる」と理解して「ならばムダな判断はしない」という「考え方」に立つのです。そして「何をめざすかは人それぞれ、目的は個人が選んでいい」というオープンな立場に立つことです。 大切なのは「悩み」が出てきたときです。私たちの日常は「悩み」に満ちています。 仕事、他人の評価、ネットやメディアにあふれる情報に「つい反応」し、ストレスや虚しさを感じて疲れている一それが多くの人の「リアル」です。こうした悩み・空しさから脱出するには「もう、ムダな反応をしない!」と決心するしかありません。
    その方法を一部紹介しましょう。
    ①心の状態を理解する・瞑想のススメ
    デスクの前でも、電車の中でもいいので、目を閉じて「心を見つめる」時間を作ります。「怒り」を感じているときは「怒りが薄いている、怒りがある」と、冷静に理解するようにします。動揺したときには、「動揺しているな、落ち込んでいるな」とありのままに理解します。大事なのは「腹を立ててはいけない」とか「動揺してはいけない」と「否定」しないことです。そのために、アタマの中で「怒りがある」「動揺している」と客観的に「言葉で確かめるとよいでしょう。こうして、「心の反応を理解する」にとどめて「それ以上に反応しない」ように心がけるのです。最初は難しく感じるかもしれませんが、だんだんできるようになります。
    ②カラダの感覚を意識する・禅のススメ
    仕事の合間に目をつむって深呼吸をして!お腹のふくらみ・縮み」を意識します(手のひらをお腹に当てて「ふくらんでいる、縮んでいる」と意識するとよいでしょう)。 また出勤途中の「歩いている足の裏の感覚」を意識します。右足、左足、右足…・と歩きながら、足の裏を感じ取ります。こうして「カラダの感覚」に意識を向けることは、ムダな反応を洗い流す効果テキメンの方法で、「様」や歩く生様と言われる「経行(きんひん)」と同じです。ぜひ試してみてください。




    出典:東洋経済 ONLINE